テーピングだけに頼る足首は、いつまでも不安定なまま
2026年09月18日
金沢文庫駅徒歩1分のアクティブレスト整骨院です。
試合前になると、当たり前のように足首へテーピングを巻く。巻いておけば大丈夫だから、と。その習慣自体は悪くありません。ただ、巻けば安心という発想でずっと来てしまうと、足首そのものは何年経っても頼りないままです。
今日は、何度も捻ってしまう足首について書きます。テーピングの外側にある話です。
捻挫を繰り返す足首で起きていること
一度の捻挫で靭帯が傷むと、腫れと痛みが引くまでにしばらくかかります。困るのは、日常生活に支障がなくなった時点で「もう平気」と判断してしまうことです。
痛みが消えるのと、足首が競技レベルの働きを取り戻すのとでは、ゴールの位置がまるで違います。靭帯の張り具合、足首まわりの筋の反応速度、足裏が地面の傾きを読み取る感覚。これらが元に戻りきらないまま練習に復帰すると、次の捻挫までの距離は確実に縮まります。
こうしてぐらつきや崩れる感覚が長く続く状態を、慢性足関節不安定症(CAI)と呼びます。
練習中や日常で出やすい変化
- 切り返しの一歩目で、無意識に踏み込みを緩めている
- ジャンプの着地が、いつも同じ側だけ流れる
- 片足立ちで目を閉じると、片方だけ極端に持たない
- ランニングの後半で、外くるぶし周りが張ってくる
- 不整地やクレーコートを、なんとなく避けている
パフォーマンスの数字には表れにくい変化ばかりです。それでも、体は正直に反応しています。
やっかいなのは、こうした無意識の手加減が本人にはほとんど自覚されないことです。切り返しがコンマ数秒遅れていても、走っている当人にはわかりません。周囲から「最近、右に切るとき少し重いね」と指摘されて初めて気づく、というケースをよく見ます。動画で自分の動きを見返すと、左右差が思いのほかはっきり映っていることもあります。
13本の研究をまとめて見えたこと
2026年、『Disability and Rehabilitation』に慢性足関節不安定症と徒手療法に関する系統的レビューとメタ解析が掲載されました。2000年から2025年初めまでのランダム化比較試験13件、参加者はのべ497名という規模です。
結果として報告されたのは、足関節の可動域と、本人の自覚する足首の機能(CAITという評価尺度)における統計的に意味のある改善でした。
ただし、この論文は歯切れよく終わりません。改善の幅は本人が実感できる最小の変化量に届いておらず、根拠の確実性も低い、と明記されています。手技を受ければそれで解決、という筋書きではないわけです。
論文が最後に置いた提案が実務的でした。徒手療法に、バランストレーニングや筋力トレーニングを組み合わせる。この二本立てがCAIのリハビリでは合理的だろう、というものです。
読み替えるなら、手技は動きを引き出す入口であり、そこから先は自分の足で支え直す作業だということ。入口だけを繰り返しても、出口には届きません。
靴、路面、練習量
足首への負担は、環境で大きく変わります。
シューズのミッドソールがへたっていると、着地のたびに足首が微妙に外へ流れます。走行距離が伸びている時期ほど交換の判断は遅れがちなので、外側のすり減り方は定期的に見ておきたいところです。
路面も同じです。コンクリートの直線ばかり走っていた人が、いきなりトレイルや芝のグラウンドに入ると、足首に求められる反応の質が変わります。負荷そのものより、負荷の種類が急に変わることのほうが危険です。
デスクワークの時間が長い方は、また別の事情があります。座りっぱなしでふくらはぎの動きが減ると、足首の可動域は静かに削られます。夕方の一歩目がぎこちないなら、その影響を疑っていい段階です。週末だけまとめて運動する方の場合、平日に固まった足首のまま強い負荷をかけることになるので、条件としてはさらに厳しくなります。
自分で確かめられる目安
道具なしでできる確認方法をいくつか挙げておきます。
ひとつ目は、壁に向かってのしゃがみ込みです。つま先を壁から10センチほど離して立ち、かかとを床につけたまま膝を壁へ近づけます。左右で膝の届く距離に差があれば、足首の動きに差があるということです。
ふたつ目は、片足立ちの保持時間。目を開けた状態で30秒、目を閉じた状態で10秒を目安にしてみてください。閉眼で極端に差が出る側は、足裏からの情報に頼りきれていない可能性があります。
三つ目は、片脚立ちのまま反対の足をできるだけ前へ伸ばす動作です。届く距離の左右差が大きいほど、支えている側の安定性に開きがあると考えられます。
いずれも数値そのものより、左右の差に意味があります。差が目立つときは、その差を埋める作業から始めるのが順当です。
放っておいた足首がたどる道
不安定な足首をかばい続けると、負担は上へ移動します。膝の外側の張り、股関節の可動域低下、片側だけの腰の重さ。足首から離れた部位の不調として現れることが珍しくありません。
競技を続けている方なら、捻挫の再発回数がそのまま出場できない期間の合計になります。年齢を重ねてからは、つまずきや転倒が生活の幅を狭めていきます。どちらの意味でも、放置して得なことはありません。
※状態によっては医療機関での検査をおすすめする場合もあります。
当院でのチェックとアプローチ
まず、最初の捻挫がいつだったか、どの動作で不安を感じるか、現在の練習量まで含めて確認します。次に動きを見ます。しゃがみ込んだときのすねの前傾角度、片足立ちの保持時間、片脚での前方リーチ距離。左右で比べると、差はかなりはっきり出ます。
そのうえで、硬さの残る部分には手技で対応し、足関節だけでなくふくらはぎや股関節までひと続きに扱います。動きが出た状態で、片足立ちやステップ動作を使ったバランス練習に移ります。研究が示した組み合わせを、そのまま現場に持ち込む形です。
バランス練習には、難易度の上げ方に順番があります。両足で安定して立てるところから始め、片足、目を閉じた片足、不安定な面の上での片足へ。そこから先は方向転換やステップを加えて、実際の競技動作に近づけていきます。いきなり難しい課題に飛びつくと、足首が支える前に体幹や股関節が代わりに働いてしまい、狙った場所の練習になりません。
競技をされている方には、復帰の段階の踏み方や、練習量の増やし方についてもお伝えします。走行距離や練習時間を1週間で1割以上増やさない、といった目安を持っておくだけでも判断が楽になります。リカバリーを設計に組み込むことは、コンディションを保つうえで欠かせません。
復帰を焦らないために
捻挫の翌週にはもう走れてしまう。だから軽く見られやすいのが足首です。走れることと、安心して切り返せることは別物だと考えてください。
復帰の判断で目安になるのは、痛みの有無よりも動作の質です。全力の8割で走れるか、片脚で着地したときにぐらつかずに止まれるか、同じ動作を疲労した状態でも再現できるか。この三つが揃わないうちは、試合形式に戻す時期としては早いと考えています。
判断に迷ったら、その時点でご相談ください。復帰を早めるための相談も、慎重に進めるための相談も、どちらも同じくらい大事な内容です。
まとめ
- 繰り返す足首の捻挫は、慢性足関節不安定症という状態として整理されています
- 2026年のメタ解析では、徒手療法後に可動域と自覚的機能の改善が報告されました
- ただし改善の幅は限定的で、バランス・筋力トレーニングとの併用が推奨されています
- 靴の劣化、路面の変化、練習量の急な増加が足首への負担を押し上げます
- 痛みが引いた段階が、次の捻挫を遠ざける準備を始めるタイミングです
参考文献
Salminen I, Schroderus N, Takatalo J. Effectiveness of manual therapy with and without exercise in chronic ankle instability for pain, mobility, and function: a systematic review and meta-analysis. Disability and Rehabilitation. 2026年2月2日オンライン公開. DOI: 10.1080/09638288.2026.2620954
PMID: 41627928





